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2010年8月28日土曜日

Kindle vs. iPad ……勝負あったんだって!

フォント表示がきれいである上に、読める本の数が桁違いに違うらしい:
State of the Art - New Kindle Leaves Rivals Farther Behind - NYTimes.com: "Although it’s worth pointing out, just in case you were indeed considering the iPad primarily for its e-book features, that the Kindle’s catalog of 630,000 current books is 10 times the size of Apple’s."

もしオモチャじゃなくて道具を買うとするならば、利用価値が10倍も違う以上、Kindle に決まりだな。

2009年1月23日金曜日

なぞなぞ(文学と政治系):オバマ大統領の愛読書はなんでしょうか?

オバマは読書家として知られている。格調高い演説からもたくさん本を読んできたことがわかる。出歩くときもよく手に本を持っている(左の写真)。でもいまでも読む「愛読書」となると、相当限られてくる。何が愛読書なのか? ルモンドが調査してそれを公開した。この愛読書こそが今のオバマを形作っていると。
Les livres qui ont fait Obama - Blog LeMonde.fr: "Ce qui ne l’a pas empêché de se nourrir en permanence des tragédies de Shakespeare, de Moby Dick, des écrits de Lincoln, des essais du transcendantaliste Ralph Waldo Emerson, du Chant de Salomon de la nobélisée Toni Morrison, du Carnet d’or de Doris Lessing, des poèmes d’un autre nobélisé Derek Walcott, des mémoires de Gandhi, des textes du théologien protestant Reinhold Niebuhr qui exercèrent une forte influence sur Martin Luther King, et, plus récemment de Gilead (2004) le roman à succès de Marylinne Robinson ou de Team of rivals que l’historienne Doris Kearns Goodwin a consacré au génie politique d’Abraham Lincoln, “la” référence du nouveau président.

Pardon, on allait oublier, le principal, le livre des livres : la Bible, of course."
聖書とシェークスピア悲劇とマルティン・ルーサー・キングとエマーソンはわかるけれど、『白鯨(Moby Dick)』が上位に出てくるのはちょっと意外な感じ。これはどう解釈すればいいのか。散人流独断と偏見の読みときをご披露する:

おいらも『白鯨』を読んだばかり。そのときの感想はここ。でももう一度読み返してみて、この本をこんな風に解釈するのは「まだまだ幼稚であった」と実感。もっとエライ本なのです。

八木敏雄の解説に因れば D.H.ロレンスはモービー・ディック(エイハブに追われるクジラ)は「白色人種の最深奥に宿る血の実体」であり「メルヴィルは彼の人種が亡びること、理想主義が亡びること、『精神』が滅びることを知っていた」と書いているそうな(アメリカ古典文学研究 (講談社文芸文庫))。博覧強記のオバマだから当然ロレンスの解釈は承知した上で読んでいるのだろう。

モービー・ディックを追い回すピークオッド号の乗組員の国籍はまさに多様そのもの。船長と航海士こそアメリカ生まれのクエーカー教徒だが、銛打ち手(船長並みの給料を貰う上級船員)は、ポリネシアの食人種、中国人、黒人、アメリカインディアンという具合。水夫も世界中から集まっている。みんなそれぞれ超人的な体力と技能を有するくせ者揃い。それを一つにまとめているのがエイハブ船長の狂信的とも言える信念と指導力だが、エイハブ船長も認めているように結局は鯨油という金銭的利益とクジラへの狩猟民的闘争本能が持続性のある結束を生み出している。まさにアメリカ合衆国。

ただ建前もある。乗船するにはキリスト教徒でなければならない。主人公(イシュメール)の親友となった食人種の銛打ち(クイークェグ)は毎晩へんな偶像に礼拝する異教徒だが、主人公は「かれはあらゆる人の子とその魂が所属するところのあの万古不変の普遍(カトリック)教会の一員である」と船主を説得して乗船させるのである。これもまたアメリカ合衆国的。オバマが好きなのもわかるのである。

しかし困ったこともある。ピークオッド号とはアメリカ合衆国そのものであるとして、最後にピークオッド号(アメリカ合衆国)は白鯨(白色人種の精神)に敗れて沈没してしまうのである。これは困る。これは(オバマ的には)どう解釈すればいいのか。

それには八木敏雄のこの小説の構造分析がとても参考になる。この小説は最後のエピローグがそのまま最初の出だしに繋がるという「循環構造」になっているというのだ。実際読み終わってすぐに最初のページに戻ると、驚くなかれ実に自然に連結してしまうのだ。永久運動ならぬ「無限循環構造」の小説なのである。

今回はピークオッド号は白鯨に負けた。でも勝敗はしょせん確率の問題。何度もやっているうちに必ず勝つときが来る。そのうちにクイークェグの銛が白鯨の目を射抜く時が来るのだ。そこではじめてこの小説『白鯨』はお終いとなるのである。それこそD.H.ロレンスが予感していた結末だ。

オバマは「雑種(混血)のアメリカ」が、必ずローマ以来続いてきた「白色人種(ヨーロッパ)の支配」を打ち破り、世界の王者になる、そしてあり続けるという強い信念を持っているのだろうというお話し。おわり。


PS:メルヴィルはアジア人については「古い因習にとらわれたあげく、どん詰まりの糞詰まりになってしまった劣った人種」という表現を使っている。でも、普遍的な価値観を受け入れたアジア人はピークオッド号ですごい力を発揮するのである。これもオバマの価値観を考える上で面白い。

2009年1月17日土曜日

メルヴィル『白鯨』……ブッシュはエイハブだったのか?

『白鯨』ついに読了。今度の岩波文庫(八木敏雄訳)は第11回目の日本語訳とのこと。まさに血湧き肉躍るお話しで、面白かった。最後の方になって、この白鯨を偏執狂的に追い回すエイハブとはブッシュ、不死身の白鯨とはアルカイダ、エイハブに巻き込まれて沈没するピークオッド号とはアメリカ合衆国のことじゃないかと真面目に感じていたら、最後の解説で「この本はそういう読み方も出来る、普遍的である所以」みたいなことが書いてあった(おいらは誓って言うが解説を先に読んだのでは断じてないぞよ)。ハムレットみたいなところもあり、百科全書的なところもあり、抹香臭いところもあるし、もちろん冒険小説として面白いし、まさに「ごった煮」。年寄りには堪えられない味。





でもブッシュJRはエイハブにするにはあまりにナイーブかも知れない。幼いな信心深いエイハブってところか。パウウェルはさしずめスターバック。チェイニーがフェダラーか。

下手な経済学の本を読むより、アングロサクソン資本主義の精神がたいへんよくわかる。説明すると長いけど、読んだらわかる。

2009年1月15日木曜日

『大帆船 - 輪切り図鑑』( S・ビースティー, R・プラット)……これ保存版

わずか27ページの図鑑だが、情報量抜群で、面白いことこの上なし:
大帆船―輪切り図鑑: "出版社/著者からの内容紹介 18世紀の大帆船を船首から船尾まで10か所で輪切りにして図解し,食事と睡眠,労働と娯楽,病気と手術,海軍の規律,そして激しい戦闘まで,スリルにみちた乗組員の生活のすべてを克明に描く."


英文学とやらを読むときにはとても役に立つ。

例えば『白鯨』で二等航海士のスタッブが「おまえは、新米水夫みたいに、主檣中段の台座の穴(lubber's hole)をくぐって天国に行くつもりだろうが、それはいかんよ。まともな道をとおって、つまり索具(rigging)をつたって行かんことには天国にはいけんのだ」とか言うくだり。八木敏雄の訳には配慮がしてあるが、それでも分かりにくい。この『輪切り大図鑑』をみれば、ちゃんと絵入りで解説されているんですな〜。その他にも知らなかったことがいっぱい!

英語の小説にはやたらと船舶用語が多い。持っておいて損はない一冊。

それにしても、イギリスの帆船は閉鎖された空間のなかのひとつの社会。分業が極度に発展していて、まるでアダム・スミスの書いた資本主義社会の標本みたい。

蛇足:蛆虫が湧いたビスケットから蛆虫を除去する方法も丁寧に図解入りで書いてある。役に立つよ。

2009年1月13日火曜日

「”ヒマあり、カネなし”の時代には本を読むのがいい」(鹿島茂)

今晩の日経夕刊「プロムナード」コラムで鹿島茂センセーが名言を。その通りだな。でも鹿島茂が言うように、あんまりいい本が出版されないのが問題。古本でいくか。

抜粋:
  1. 正月の神保町はゴーストタウン。ニッポン人は休みを取りすぎ(注:これ国際統計ではそうなっている。日本の休日の多さは世界一)。でもこれも大不況下の生産調整を考えるといいことか。
  2. いまの不景気で、ニッポン人は「カネはないけれどヒマだけはある」という状態に追い込まれた。バブル期の「カネはあるけどヒマがない」というのとちょうど逆の現象。
  3. ではこの日本人にとっていちばん都合のいい時間の過ごし方は何か。読書だ。読書ほどカネのかからない暇つぶしはないからだ。
  4. でもいまのニッポンの出版界には良書作りのノウハウがないな〜。
おっしゃること、いちいちごもっとも。おいらもすっかりビンボーになったので今年は本でも読んで暇つぶしをしようかと思っている。アホな新刊本や稀覯本なんかを買わない限り、ほとんどお金がかからない。農村既得権集団に搾取される心配もない。

いま読んでいるのはメルヴィルの『白鯨』。岩波文庫で新訳が出ている。とても読みやすいのでおすすめ。やたら聖書の引用が多いので、旧約聖書も一緒に読まねばならないが、これも面白い。

昔のバビロニアでは、王様は「言うことを聞かないとお前を殺して、お前の家は厠(便所)にする」との脅しを連発する。古代イラクでは、トイレは家の外に作られていたのだ。勉強になるな〜。



2009年1月8日木曜日

『この世でいちばん大事な「カネ」の話 』(西原理恵子)……これ良書!

サイバラも遂にこういう本を書くようになった。『恨ミシュラン』からもう20年も経っているからサイバラも歴としたおばさん。自分のこどもたちの世代に向けて、彼女の人生哲学をホントに正直に書いている。今の世の「自分探し」とやらに惚けている甘ったれた若者は、ぜひこの本を読んでほしい:
Amazon.co.jp: この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ) (よりみちパン!セ): 西原理恵子: 本: "内容紹介
西原理恵子が「カネ」を通して自らの生き様と理念を語る初の自伝的エッセイ登場!
故郷での貧しさゆえの八方ふさがりの生活。東京に出てきて学校に通いながら自分の絵を出版社に持ち込み次第に認められて行く。そしてギャンブル、アジアへの旅で出会った貧しい子ども達、大切な家族の事。
「お金」について考える事は人間関係・仕事関係、つまり自分と世界との関わりにつながっていくのです。
漫画で描かれた西原ワールドがより深く・よりリアルに迫って来る1冊。
西原ファンならずとも納得・感動の1冊です!"
くだらない本はどんどんゴミとして出す散人も、この本は永久保存だ。

名言集に収録したい名言が無数にある。その一つ:
「最下位」には「最下位」の戦い方がある!

これはすべての人に言える箴言。自分の実力相応で自分なりの努力をすればかならず道は開けるというもの。つまり自分の実力相応で努力して「カネ」を稼ぐことこそ人間の道だという。「自分にはもっと適した仕事があるはずだ」と自分探しとやらで、結局ボランティアなどのいわゆる「カッコイイ仕事」で自己満足をしている人たちは、これを読むときっと水をぶっかけられたような気分になるだろう。若者に多くの読者を持つサイバラがこういうことを言ってくれるのは、NHKなどは決して言わないことなので、まさに国家功労賞ものである。

サイバラはおばさんになってもまだまだエライ。サイバラ頑張れ!



2009年1月7日水曜日

くだらない本をどんどん「燃えるゴミ」として出すと、すっきりする

年末から本の整理にとりかかったのだが、癖になってしまった。実にくだらない本でおいらの書庫が満杯になっているのだ。こういうものを残しておくと、子孫に恥ずかしい。燃えるゴミの回収日(それと資源ゴミの回収日)に毎回大量に出すのが日課となった。実に気持ちがいい。

現役時代の勤務場所が神保町の近くだったため、大量に新刊本を買うのが習性になっていた。毎月かなりの出費だったが、いわゆる「男の道楽」なんかとくらべると「本」への支出は、いくら大量に買ったとしても、稀覯本でもない限り大したものではない。それに「これは投資である」と自分に言い聞かせてきた。ところがとんでもない。いま見てみると、投資どころか、まるで「恥のかたまり」なのだ。

特に、時事問題とか時流に乗って売られた書物は、完全にゴミ。なんとか賞の受賞とかいう文芸作品もほとんどがゴミ。エッセイ集なんかは特にひどい。製紙パルプにしかならない。よくもまあ、こんなに下らない物にお金を使ってきたかと、われながら恥ずかしくなった。

結局残るものはこういう感じ:
  1. 辞書とかのリファレンス関係(かならず役に立つ)。情報量の多い単行本もこの範疇にはいる。
  2. 全集もの(全集が出せる著者の本は読んで損はしない)。
  3. 古典(長年の淘汰に生き残ったものだからいい内容だ)。
  4. 翻訳物(翻訳作業とは古典になる確率が高い本を選んでするから当たり前)。
  5. 岩波文庫や新潮文庫などの文庫もの(安っぽい文庫はダメだが、しっかりしたところが文庫にする本は概ねいい内容)。

内容が気に入らない本(西尾幹二とか)も資料として置いておいたのだが、これも迷わず棄てる。オヤジはこんな本を読んでいたのだと子供に思われては、とても恥ずかしいのだ。

書棚が徐々にすっきりしてゆくのは良い気持ち。それにしても、これだけくだらない本を売らないと食っていけない日本の出版業界は、くだらない投資信託を売らないと食っていけない日本の証券会社と似ていて、ホントにどうしようもない。本を書いてメシを食う人間が多すぎるのが問題だと思う。投資信託と同じ。

2008年11月2日日曜日

『食品の迷信』(荒川充)……読んでみよう!

今日の日経で農政ジャーナリストの中村靖彦氏が薦めておられた本:

日本の消費者が信じ込んでいる「国産食料品が輸入食料品より安全だ」というのは決して真実ではないという。

曰く:
  1. 米国のFDAが発表した資料によると輸入が拒絶された輸入食品の違反率は日本の方が中国より高い。

  2. また国産農薬の検査基準は甘い。

  3. 天然魚の方が養殖魚よりも安全というのも神話(マグロの水銀含有量など)。

中村氏はいまの日本のメディアによる中国食品バッシングは異常だと言われる。みんなが「知りたいこと、信じたいこと」を報道するのが日本のメディアだから当たり前とも言えるが、少しはジャーナリズムとしての矜持を保持して貰いたいものである。

2008年10月3日金曜日

大相撲八百長報道:日本相撲協会はあくまでも「科学」を無視するつもり

まだこんなことをやっている:
asahi.com(朝日新聞社):大相撲八百長報道めぐり元力士証言 午後には朝青龍出廷 - スポーツ: "大相撲の横綱朝青龍の取組で八百長があったと報じた「週刊現代」の記事などで名誉を傷つけられたとして、朝青龍や対戦相手の力士らと日本相撲協会が、発行元の「講談社」(東京都文京区)などに損害賠償や謝罪広告を求めた訴訟の口頭弁論が3日、東京地裁で開かれ、元小結の板井圭介氏が講談社側の証人として出廷した。"
日本相撲協会は講談社に数億円の損害賠償を請求している。あまりにも「常識」とはかけ離れた「ごり押し」。昨今のニッポンにはこんなのが多いね。

ところで、相撲のことはなんにも知らない1人の統計学者(経済学者)が日本の相撲の星取り表を分析し「ニッポンの相撲は八百長だ、確率論的にはあり得ない勝敗結果である」と断言したことはご存じか?

この本:
Freakonomics: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything
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普通の人はみんなそのことを知っている。これで日本相撲協会が裁判で勝ち、「王様は裸だ」と指摘したと勇気ある出版社が数億円ものペナルティーを課されるとなれば、日本の裁判システムこそおかしい、ということになる。

2008年8月21日木曜日

『世界を動かしたユダヤ人100人』(マイケル・シャピロ)

わりかし面白かった。アインシュタイン、フロイト、ノイマン、キッシンジャー、リカード、マルクス、ディズレーリー、トロツキー、プルースト、カフカ、ベルグソンをはじめいろんな偉人の話が続く、もちろんモーゼやダビデ、イエスや聖パウロも「入っている」。正直「えっ?」と思うような人がユダヤ人だったりなんかする。勉強になりました。

世界を動かしたユダヤ人100人世界を動かしたユダヤ人100人
Michael Shapiro 大谷 堅志郎

講談社 2001-08
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なぜユダヤ人に「偉人」が多いのか? 著者は説明はしていない。一神教の論理性の問題なら分派のキリスト教徒もイスラム教徒も同じ。DNAの問題なら今の中東の人は偉人だらけということになるしそうでもないだろう。やはりおかれた境遇だ。散人流に言うなら「彼らは常にナショナリズムのドツボから超越していたから」と言うことになる。傍目八目と言うではないか。「品格、品格」などと言って、自己満足的夜郎自大を続けていては、先が読めない。

この本索引がいい。章立てされている100人ばかりでなく、この本で引用された数多くの人名についても索引が整備されている。

2008年8月10日日曜日

「子供より古書が大事と思いたい」(鹿島茂)

猛烈に嫉妬心をかき立てられる本。散人は元来嫉妬というものには無縁であるが(農村富裕層に対する批判を書いているのは社会的義侠心からであり嫉妬心からではない)鹿島茂には嫉妬してしまった。ものすごいお金を古書に注ぎ込んでいるのである。古書蒐集はお金がかかる趣味。おいらにはとてもできない、と実感。

子供より古書が大事と思いたい 増補新版子供より古書が大事と思いたい 増補新版
鹿島 茂

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でも鹿島茂はさすがに莫大な身銭を古書に注ぎ込んだだけあって、その道の権威となった。古書の値打ちの見分け方、えらい古書とえらくない古書の違い、値段の仕組み、入手方法などなど、事細かに教えてくれる。古書を通じての人間の階級判別につながっていく点は、著者の『馬車が買いたい』1に同じ。下手にえらくない古書なぞ持っていると、バカにされるのである。くわばらくわばら。

これだけ古書を買いまくっていたらいくら鹿島茂の新刊書が売れてもとても持たないと思う。鹿島財閥の御曹司であるという説は著者により否定されているが、いったいどこからお金が出てくるのであろうか2。世界の七不思議のひとつだ。



1 『馬車が買いたい』:
馬車が買いたい!―19世紀パリ・イマジネール馬車が買いたい!―19世紀パリ・イマジネール
鹿島 茂

白水社 1990-07
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2 :鹿島茂によれば銀行から借金するとのこと。ただ銀行は古書を買うからと言う理由では貸してはくれないので、別の目的をでっち上げるとのことだ。古書蒐集には借金の才能も必要らしい。



2008年8月6日水曜日

『断腸亭日乗欄外』(松井英雄)……結構面白い!

最近神保町で見つけた本。戯曲であるが、けっこう真に迫っている。お雪はヨネであったというお話し。「ウッソー」と言う人は先ずお読みあれ。

断腸亭日乗欄外断腸亭日乗欄外
松井 セツ子

文芸社 2003-01
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最後に荷風はヨネ(つまりお雪)に「天誅」を加えられる。どんな「天誅」であるのかは、お楽しみ。

アマゾンでは著者が「松井セツ子」となっているが、この人は書いた人(英雄)の奥さま。松井英雄氏はお亡くなりになっており、奥さま(セツ子氏)が夫の遺志を継ぎ、この戯曲が何らかの方法で舞台化・映像化されることを願っておられるとのこと。

「金持ちが贅沢をやめることこそ貧乏退治の第一策」(河上肇)

散人は教養主義とは無縁だったからこの歳になるまで河上肇の『貧乏物語』を読んだことがなかった。しかし、ニッポンがどんどん貧乏になっている今、処方箋を求めてこの本を読んでみたら、驚き、内容が実に新鮮。アダム・スミス並みの博学と説得力のある文章にも感動した。この本を書いた頃の河上肇はまだマルクス主義者ではなかったと思う。むしろイギリスのロイド・ジョージに心酔していた。豊かな先進資本主義諸国における「貧乏線(Poverty line)」以下の民衆の数の比率を統計的に調べ上げ、経済の発展は贅沢品の生産に繋がっただけで貧困の解消には繋がっていないと喝破。これは全く正しい。その上で河上肇の書いた対策が掲題のもの。解説を書いている大内兵衛は「この段階での河上肇はまだ判ってなかった」と貶しているが、判っていなかったのは大内の方。あいつらマルクス経済学者の処方箋通りにやった国(ニッポンも含め)がその後どうなったかを見れば河上肇の方が正しかったことが判る。

貧乏物語 (1965年) (岩波文庫)貧乏物語 (1965年) (岩波文庫)
河上 肇

岩波書店 1965
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河上肇は、つまり、経済の生産力が増えているのに都市貧乏人に生活必需品が行き渡らないのは、贅沢品を作った方が儲かるからその方向に生産プラットフォームがシフトしているからだという。金を持っている消費者の行動を改めねばならないし、その方が儲かるからと政府の指導のもとに農家が生産調整して米価をつり上げるというのもおかしいという。まさに現代ニッポンで今農水省とコメ農家がやっていることに他ならない。これが日本社会をさらに貧困化させているのである。

一個数万円もするメロンやマンゴーや高級魚を嬉々として食べる消費者も、自分がカッコワルイ上にニッポンの貧困層の困窮を加速していることを自覚しなければいけないね。また儲かるからといって大衆の虚栄心を煽り異常に高いブランド産品を資源を浪費して作り、安い方がいいという消費者に安い輸入品を買わさないように高関税を設定する農村団体は、恥じるべきである。

現代日本では貧困の問題はなくなったと考えられているが、間違いだろう。「貧乏線」をどこに置くかだけの問題だからだ。交易条件が悪化する中での不況の進行は、今後日本の都市貧困層がますます増加することを意味している。河上肇が提起した問題は依然として新しい問題なのである。

2008年7月11日金曜日

『寝ながら学べる構造主義』(内田樹)……ほんとに寝ながら読んで分かってしまった!

この何十年、何度となく難しい構造主義を理解しようと試みたことがあるけれど、その度に挫折してきた。ところがこの新書版の本を読んで、実に分かってしまったのだ! 構造主義ばかりじゃなく、マルクスもフロイトもニーチェもサルトルも「な〜んだ、そんなことだったのか」なのである。

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)寝ながら学べる構造主義 (文春新書)
内田 樹

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内田樹先生に騙されているのか? それもまた結構だと思う。大筋のところで間違いはないだろう。

いままでのエライ先生達は、話を難しくしすぎ。きっと自分でも分かってなかったんじゃないか(分からないから難しい説明しかできない)。こういう本が出版されるような世の中に住むことが出来て、いまの若い人はとても得をしていると思う。

2008年7月9日水曜日

『文芸にあらわれた日本の近代』(猪木武徳)

久しぶりに文芸関係の本を読んだ。小生のブログが光栄にも猪木武徳氏の目にとまり、荷風がお好きなようですねと同氏が荷風についても触れられた掲題の本を送っていただいたのだ。日本経済学会の会長も務められたバリバリの経済学者が永井荷風に興味をお持ちだと言うことに驚いた。荷風以外にも、武田泰淳、太宰治、三島由紀夫、谷崎潤一郎、横水利一、小林多喜二、大岡昌平、山田風太郎、夏目漱石などの文学を読み、その中から日本の近代を読み解く手がかりを探るという趣向である。目からウロコの発見が多々あり、裨益するところ多大であった。

文芸にあらわれた日本の近代―社会科学と文学のあいだ
文芸にあらわれた日本の近代―社会科学と文学のあいだ猪木 武徳

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star文学と経済学の間 : 思考のヒントにあふれた好著

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猪木武徳氏は「文学と一部の社会科学が、予想以上に密接な関係を持っていることを痛感する」とされ「文学と経済(史)研究双方が互いに相補うことによって、歴史的存在としての経済社会をより強く実感できる」さらに「経済学でモデルを用いて語ることの『真理』は限られている」として、自然科学的方法ではない社会生活全体の「あるがまま」を外から捉える方法が大切だと述べられる。その時代の人間がどのような熱情と意志を持っていたのかが重要で、ちなみにこの新しいアプローチを開発したのはA・トクヴィルだと。出ましたね〜、大好きなトクヴィル。さらに、文学作品は時代の「良質な観察者」であるといわれる。御意、全く同感。

詳しくは読んでいただきたいが、荷風については『あめりか物語』が書かれたその当時の日本と米国の関係についての詳しい歴史背景の記述が秀逸。大量の日本移民が米国に流入し、警戒され、迫害を受けながらも、日露戦争に勝ったこともあり在米日本人の間に妙な「ナショナリズム(ニッポンエライ思想)」が高揚していた状況がよくわかる。荷風が以来「ニッポン人」から距離を置くようになった背景が理解できたような気がした。(余談になるが、鷗外、漱石、荷風のそれぞれの留学時代の日本の国際的地位と三文豪の思想スタンスの差についての散人流の仮説を持っているが、それは別の機会に)

武田泰淳についての一章がある。左翼の武田泰淳と猪木武徳とでは波長が合わないのではと思ったが、猪木武徳氏は「ひとつの主義・主張と、それを奉ずる人とは区別しなければならない」と武田泰淳が好きなことを認めておられる。これについても、御意、御意、同感。武田泰淳は実に善人で好人物、非常に魅力的な人物なのだ。これは奥さんの武田百合子の随筆を読めば分かる。この本で、水俣病について世のマスコミ論調とは違う一面的でない見方を武田泰淳がすでに書いていたことを知った。世の中は複雑だ。

その他、とても面白いディテールがたくさん。読み終わった感想をひと言で言えば「ニッポンは変わっていない」ということ。「人間は変わっていない」と言うことでもある。明治・大正・昭和・平成、われわれは同じ時代に生きているのだ。古典文芸作品は常に新しい。


2008年6月22日日曜日

『十五少年漂流記』への旅(椎名誠)

「十五少年」が辿りついたのはチリのハノーバー島ではなかったとする説が唱えられている。椎名誠は実際に二つの島を訪れ、どちらが正しいのかを考えるとのこと。日経の書評欄で見つけた。

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Wikipedia で新説の「チャタム島」なるものを調べると、こっちの方は頗るニュージーランドに近い(それでも1000キロあるが)。かたちもちゃんと「蝶」のかたちをしている。真ん中に湖もある。

おいらも行って確かめたいな〜。