2009年1月15日木曜日

『大帆船 - 輪切り図鑑』( S・ビースティー, R・プラット)……これ保存版

わずか27ページの図鑑だが、情報量抜群で、面白いことこの上なし:
大帆船―輪切り図鑑: "出版社/著者からの内容紹介 18世紀の大帆船を船首から船尾まで10か所で輪切りにして図解し,食事と睡眠,労働と娯楽,病気と手術,海軍の規律,そして激しい戦闘まで,スリルにみちた乗組員の生活のすべてを克明に描く."


英文学とやらを読むときにはとても役に立つ。

例えば『白鯨』で二等航海士のスタッブが「おまえは、新米水夫みたいに、主檣中段の台座の穴(lubber's hole)をくぐって天国に行くつもりだろうが、それはいかんよ。まともな道をとおって、つまり索具(rigging)をつたって行かんことには天国にはいけんのだ」とか言うくだり。八木敏雄の訳には配慮がしてあるが、それでも分かりにくい。この『輪切り大図鑑』をみれば、ちゃんと絵入りで解説されているんですな〜。その他にも知らなかったことがいっぱい!

英語の小説にはやたらと船舶用語が多い。持っておいて損はない一冊。

それにしても、イギリスの帆船は閉鎖された空間のなかのひとつの社会。分業が極度に発展していて、まるでアダム・スミスの書いた資本主義社会の標本みたい。

蛇足:蛆虫が湧いたビスケットから蛆虫を除去する方法も丁寧に図解入りで書いてある。役に立つよ。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

英語の小説にはやたら船舶用語が多いというのはまったく同感です。一方、四面を海に囲まれた環境にもかかわらず、われわれの文学は、畳の上か、暗いバーの片隅か、カイシャの中、マンション・長屋の一室が多く、海と波と風のダイナミックさには縁遠いように思います。「人生は追い風を受けているときがいちばん危険だ。順風満帆などとほざいていても、ジャイブ一つの失敗であっという間にチンなのだ」とか、「ここまで出世するにも、タック、タック、またタックの連続で、すんなり来れたと思ったら大間違いだ」といった表現が解説抜きで通じる世の中になってほしいと願っているのですが。

Unknown さんのコメント...

順風満帆でスピンを張ったらあっという間にブリーチングとか。

ところでこの「ブリーチング(breaching)」と言う言葉。元はといえば帆船航海術用語。それがクジラのジャンプに使われるようになって、いまや Google でブリーチングを検索するとクジラの話ばっかり。これをクジラに使うようになったのはメルヴィルの『白鯨』からだと思う。しょっちゅう出てきますよ。それより前の捕鯨関係の本はないから『白鯨』が最初だと思う。

ジャック・ロンドンも面白いですね。「シーウルフ」なんかもう一度読んでみたいな。

匿名 さんのコメント...

A級ディンギーやシーホースという小艇ばかりに乗っていたため、ジャイブの失敗ではこれまでいやになるほど大腸菌入り海水を飲んでいます。ブローチングの経験はありませんが、クルーザーがやったのを突堤から見たことがあります。今回、散人さんに啓発され、「シーウルフ」を読んでみようと思い立ちました。海外にいたときはチチェスターの「孤独と海と空」をボロボロになるまで読みました。

Unknown さんのコメント...

たいへんお恥ずかしい。小生混乱してました。「ブローチング」の意味で「ブリーチング」を使いました。

手元の辞書では:

broach, veer or cause (ship) to veer & present side to wind & waves.

breach, (Naut.) breaking of waves

ヨットでどうしようもないトラブルは「ブローチング」でしたね。小生は初島レースでいっぺん経験しただけなのであやふやになってしまいごめんなさい。大きな波のなかでは小型船舶(モーターボート)でもとても危険とされているらしいです。

A級ディンギーはいいですね。特にオールでこげるのがいい。運動になるし、いまのシカーラをA級ディンギーに代えたいなと思ってるのですが、木製は手間が掛かるからイタリア製のFRPがいいな〜。でもネットでみても売っているところがない。勉強中です。